キミの隣、ふわり

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   考えるのは、もちろん龍さんのことばかりだ。腕時計を確認すると、20時を過ぎていた。もう、花火は上がってしまっただろう。一緒に花火見たかったな……。  ヤケになって、4杯目のシャンパングラスを(から)にした時、頭上から声が降ってきた。 「いないと思ったら、こんなとこにいた」  歩夢だった。 「20時過ぎたしさ、そろそろ抜け出さない?」  秘密の話をするには、少し声が大きすぎるのは、歩夢も酔っているからだ。もちろん、僕も酔ってる。 「家で待ってる彼女さんが泣いてるの?」 「そうなんだよ。さっきから、メールと電話が鳴りっぱなしでさ。寂しいって泣いてる恋人を、これ以上放っておくのは心苦しいんだよ。  司のおかげで、毎日一緒にいられるようになったけど、それでも、好きな人と離れるのはツライ。小さくして、ポケットに入れて歩きたいけど、そしたら、できないからね、色々と」  僕を見てニヤリと笑った歩夢は、やっぱり酔ってる。彼が思っているよりも、ずっと。 「あーぁ、僕も歩夢みたいに一緒に暮らしたい……。毎日毎日、会いたくて死にそうだよ。今日だって、本当は一緒にお祭りに行くはずだったのに……」 「そうなの?それは、さっさと抜け出そう‼︎いつものように、アリバイ工作は僕に任せて、お泊まりしちゃいなよ」 「どういうこと?」  不意に背後から聞こえた声に、僕と歩夢は驚いて振り返る。誤魔化したところで、今の会話は取り消せないのだということを、ママの表情が物語っている。 「ねぇ、司。あなた、もしかして、お付き合いしている人がいるの?」  ママの問いかけに、僕は躊躇うことなく頷いた。
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