キミの隣、ふわり

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   せっかくのメンチカツは温かいうちに食べてしまいたいから、お行儀が悪いけれど、歩きながら食べるとして、残りの戦利品たちはどこで食べようか。  そうだ、公園のベンチで食べよう。今日は天気も良いし、気持ちの良い昼下がりが過ごせそうだ。  あぁ、ワクワクが止まらない。思わずスキップでもしてしまいそうになった時——目の前に何かが立ちはだかった。  不足の事態が起きた場合、瞬時に反応できるほど、僕の運動能力は高くない。言うまでもなく、立ちはだかった何かに、僕は顔面からぶつかった。  それほど痛くはなかったけれど、頭上から降ってきた声に、心臓が大きく跳ねた。 「はい、つーかまーえた」  揶揄うような呑気な声に、目の前の何かを見上げると、声の主である金髪大男は満足げに微笑んでいた。  こ、こ、こ、今度こそ、お金を巻き上げられる。血の気がさーっと引いていく。 「逃げることないじゃん」 「に、に、逃げてません。ぼ、僕はこれから、公園のベンチで優雅にランチを食べようと思っていただけです」 「ランチにしちゃ、時間が早くない?まだ、11時前だよ。ん?待って、この時計、めちゃくちゃ高いやつだよね?」  ビニール袋を下げている僕の腕を持ち上げて、金髪大男が腕時計を見ている。そうです、高いです。たぶん。よく知らないけど、あのパパが買うんだから高いはず。 「あげます」 「ん?」 「この時計、あげますから。お金だけは巻き上げないでください」  狼に食べられそうな仔羊よろしく、震える手で腕時計を差し出すと 「俺、腕時計つけないから、こっち貰うわ」  と、言って、金髪大男はメンチカツにかぶりついた。僕の手には、半分になった熱々メンチカツがある。少し悲しいけれど、これでお金は守ることができた……と、思う。
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