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女の子たちを軽くあしらいながら、楓さんのお店でビールを買っている龍さんを、焼きそばをもそもそ食べながら見つめる。
うーん。あんなカッコいい人を、独り占めしようとする方が、間違いな気がしてきた。2番目でも、3番目でもいいから、傍にいたいって言う人の気持ちが分かったよ。あ、帰って来た。
「はい。司の分も買ってきた」
「ありがとうございます」
僕が気に入って飲む缶チューハイを差し出した龍さんは、なんだかご機嫌だ。
「何話してたんですか?」
「司きゅんとお揃いの浴衣いいねー。ラブラブだねー。って、楓が言ってた。あと、司きゅん、超絶可愛いね。だって」
「いや、そうじゃなくて」
「ん?」
「声掛けられてたでしょ?女の子に」
龍さんは、しばし考えてから
「……え、いつ?」
と、言った。え?軽くあしらうどころか、話しかけられていることに、気づいていない、とかある?
じとーっとした目で見つめても、龍さんはお構いなしで笑っている。なんだか、1人で不貞腐れてるのが馬鹿らしくなってきた。
缶チューハイをぐいっと飲んでから、龍さんの手を取って立ち上がる。
「スーパーボールすくい、やりたいです」
「よしっ。やろう。スーパーボールだけじゃなくて、他にもあったよ」
龍さんの言う通り、スーパーボールだけじゃなくて、ダイアモンド型のキラキラした飾りや、小さなアヒルとあざらしもあった。
僕は散々迷って、アヒルとあざらしのやつにした。アヒルが6匹で、あざらしが4匹取れた。4匹だと縁起が悪いからって、おじさんがもう1匹くれて、合計で11匹になった。
小さなビニール袋に入っているアヒルとあざらしを見せると、龍さんは吹き出すように笑った。
「龍さん、酔ってます?」
「うーん、ちょっと酔ってる。だって、司の浴衣姿が可愛いんだもん。マジで酒がすすむー」
「飲み過ぎないでくださいね?」
空になった缶をゆらゆらさせている龍さんが、僕の肩に腕を回し、耳元に口を近づける。
「大丈夫。どんなに酔ってても、浴衣は脱がせられるから」
「なっ、」
思わず顔を赤くすると
「あぁ、楽しみ」
と、言って、龍さんはクスクスと笑った。
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