キミの隣、ふわり

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   月曜日。  龍さんと向かい合って朝ご飯を食べていると、スマホが鳴った。ビクッと体を跳ねさせた僕を見て、龍さんはクスクス笑って 「大丈夫。俺のだよ。ちょっと電話してくる」  と、言って階下に降りて行った。実は、龍さんのスマホは良く鳴る。取引先の業者さんだったり、今は田舎に引っ越してしまったご両親から、野菜を送ったよ、という報告だったり……。  友達との気楽なやり取りだけをしてる僕とは、やっぱり違う。ちゃんとしたオトナなんだなって思う。  ママとパパは僕のことを心配しているだろうか。もう、あんな息子はいらないと、愛想を尽かしているだろうか。それなら、その方が気が楽だ。僕だってもうハタチのオトナなんだから、自分のことくらい自分で決められる。  作り方を教えてもらいながら一緒に作った玉子焼きを口いっぱいに頬張ったところで、龍さんが戻ってきた。 「司、今日は大学行かないんだよね?」 「ふぁい。ふぉいうか、もう、いふぃまへん」 「もう行かないかどうかは、ゆっくり決めればいいよ。でさ、今日、ちょっと留守番しててくれる?」 「ふふふぁん……」 「そう、留守番。取引先の人と打ち合わせすることになって、ちょっと出かけなきゃいけないんだ。1人だと心配だから、楓のとこ行っててよ。俺が出かける時、連れてくから」  1人で留守番くらいできるけど、龍さんに心配かけるのは嫌だから、楓さんのとこに行くことにする。楓さんと話す時はいつも酔っぱらっていて、すぐ寝てしまうから、仕事中の方が、色々と話ができるかもしれない。  一緒に洗い物をして、一緒に着替えて、一緒にお店を出ようとした時、ドアノブに手を伸ばした僕の手を掴んで、龍さんが屈むようにして唇を触れ合わせた。 「不意打ちはズルいです」 「そう?じゃあ、キスしてもよろしいですか?姫」  真っ直ぐに見つめられて、頬が熱を持つ。まだ朝なのに、なんなの、その色気‼︎ 「……聞かれると、それはそれで、恥ずかしいですね」 「姫はワガママだなぁ」  龍さんは、ふふっと笑うと両手で僕の頬に触れ、王子様みたいに優しいキスをくれた。こんな1日の始まり、幸せすぎるっ。
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