届いてない

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届いてない

 息を吐いて上を向いても地元のような星空はお目にかかれない。スプリングコートを脱げば肌寒いような気温の中、ぼんやり街灯が浮かぶ夜道をゆったり歩く。 「――ふう」  上手く就活を終え、バリバリ働き始める予定だったのに。結局は毎日のデスクワークから頭痛持ちとなり、オフィスの空気を読んでは頭を下げる日々が数年続いた。それも今日で終わり。同じ職種でリモートワークの出来る職場へ転職するのだ。  転職先へ再就職するまで数日休みがある。のれんの掛かった狭いラーメン屋に入り味噌ラーメンを注文するとき、いつも我慢していたにんにくを思い切り搾った。ぴこん、と鳴ったスマホに反応するも通知欄に思い描いた人の名前はない。 「ただいま」  家に着けば誰もいない部屋に声をかけ、ヒールを脱いでベッドに腰かけスマホを開く。Wi-Fiに入ったところでもう一度メッセージアプリの「パル」を開くも返信どころか既読もついていない。  しばらくぶりに春奈に連絡をとったきっかけは、実家でポーチをひっくり返したことだった。
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