言えなかった

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 不合格の原因は成績じゃなくて面接だろう。  高校二年からお昼に弁当を食べるような、ただそれだけの仲間だけど春奈が肝心なときに緊張しやすい性格ということはわかっていた。 「りぃに頑張ってって応援してもらって嬉しかったんだよ、でも……」 「パルパル、ぎゅってさせて」 「なにそれ」  いいから、と私は春奈を抱きしめる。 「……りぃ」 「ん?」 「不安だった」 「うん」 「りぃが諦めた分、頑張ってこようと思ったのにね」 「それ関係ない」  確かに私も同じ大学を受けたかった。でも受けなかった。別に枠を奪い合った訳ではなくて、単純にうちの経済力では行けないだけ。だから春奈が気に病むことはひとつもなかったはずなのに優しい春奈は気にしていたのだ。 「私、一般でもう一度受ける。そんで一番で受かる!」 「一番?!」 「そう!」 「いいね、私も頑張ろうかな」  違う大学だけど、と笑った。同じ学部に行きたいのにライバルではない。春奈と特別仲良しではないけれど、受験期だけは確実に仲間だった。
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