言えなかった

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 卒業までわずかとなり、自由登校になると春奈は全く学校に来なくなった。私もまた、受験ラッシュが始めると卒業式まで登校することはなかった。 「久しぶりパルパル~」 「おひさ! とりあえず写メろ」 「うい。パルパル、盛れるやつがいい」 「このフィルターめっちゃ盛れるよ」  卒業式の日、登校するなり自撮りを求める。他の子もそうだ。 「進路どんなん?」 「私は東京だよ」 「まじか」 「うちギリ埼玉」  クラスの中でこそこそと進路についての会話が聞こえてくる。 「莉緒、決まった?」  流れで聞いてきた春奈に「まだ」と伝えた。 「春奈は?」 「一応都内の私立」 「おお、おめでとう!」  ありがとう、と春奈は眉を下げて笑った。 「連絡してね」 「うん、決まったら連絡する」  なんてことなく卒業式は終わり、皆バラバラに帰っていく。今日を境に人生で二度と会わなくなる人も出てくる。春奈みたいにノリが良くて気も遣わない仲間にこれから出会えるのか、昨日布団の中で考えてはみたものの答えはわからなかった。
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