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ブーンと自動ドアが開いて入ってきたのは、ファンタジー系ゲームに出てくる剣士っぽい男である。
「いらっしゃいませー」
声をかけると、頷きが返った。
男は慣れたようすで入口すぐの棚の前に立つと、革手袋を取った。そしてそのまま俺のほう――レジへやってくる。
バーコードを読みこませ、金額を告げる。
男は首からぶら下げたカードを手に持ち、レジ前に設置してある端末にかざす。電子決済時の音が鳴り、これにて支払い完了。
「中身だけ持って行かれますか?」
「いや、これは予備にしようと思っているので、袋に入っているほうが助かる」
「わかりました。では、このままで。ありがとうございましたー」
鷹揚に頷いた男が、コンビニから出て行く。
その背中が暗闇に消えたあと、相方がバックヤードから戻ってきて、入口の外は、見慣れた風景に戻った。大型トラックが通行し、窓がガタガタ揺れる。
以後はたいした客もないまま時間が過ぎ、夜勤終了。値引きしてもなお残った廃棄弁当を持って、家に帰る。
このことに対して、コンプライアンスを叫ぶ奴もいるかもしれないが、ローカル店ならではのゆるさだ。ゴミ削減のためオーナーも了承していることなので、見逃してほしい。通報いくない。
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