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初めて「異世界の人」を見たときは、そりゃあ俺だってビビった。あんまりにも驚きすぎて、思わずバックヤードに逃げ込もうと思ったぐらいだ。
だが、逃げられなかった。
何故なら、奥へ続く扉の先が土壁だったのだ。
ならば外に助けを求めようかと思ってみても、なにやら真っ暗だ。街灯の明かりすらない。
それだけなら停電の可能性もあるが、いつもなら時折見える車のヘッドライトもないのだから、おかしい。
土で汚れたごっついブーツを履いた男は、おもむろに27センチの安全靴を手に取って、レジに来た。
外人だ。目が青くて、金髪。
いらっしゃいませって、英語でなんて言うんだっけ?
学生時代の記憶をさらってみるけれど、出てこない。
「これを頼む、あと煙草をくれ」
日本語だった。よかった。
告げられた番号の煙草をひとつ取り、商品のバーコードを読み取る。POSレジに表示された金額を、業務的に読み上げた。
これはもう職業病というか、無意識の反射行動。
すると男は、なにかのカードを手に持つ。
現金支払いは少なく、電子決済が主流になっているため、そこにも違和感なく反射的に応じた決済を操作しようとして、レジ画面を見て固まった。
表示が変わっている。
見慣れない選択肢が現れており、「ギルドカード」とあった。
なんだそれ。
男が言った。
「ギルドマネーで」
なんだそれ(二回目)
どこのRPGだよ。
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