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たまたま夜勤の時間帯に店を見にきたオーナーは、この現象にひょっこり遭遇してしまった。
破れて役に立たなくなったグローブ、切り傷だらけの手のひら。
爪先に穴が空いているブーツ。覗いている指には血が滲んでいる。
自動ドアの向こうからやってきた満身創痍の外国人を見て、警察に通報するより前に、「お兄さん、この革手を使いなさい」と言ったオーナーはちょっとおかしいのではないかと思わなくもないが、彼は夢だと思ったらしい。気持ちはわかる。俺もゲーム脳だし。
だが、数日後にも同じように男が現れたことで、考えが変わった。
幾分か身なりを整え、まるで登山者のような荷を持って現れたその人物は、オーナーに切々と感謝を告げたらしい。
彼はダンジョンに潜り、レアアイテムを持ち帰って売ったり、ギルドの依頼を受けて目的の物を取ってくる冒険者。
新しいエリアが見つかって入ってみたところ、地盤が崩れてしまった。そんなときに見えた明かりを頼りに辿り着いたのが、この店だったという。
助かった。命の恩人だ。貴方が与えてくれた防具のおかげで、新しいマップが開拓できた。
感謝している。本当にありがとう。
およそ儲けとは程遠いレベルのコンビニを経営しているぐらいの男だ。
オーナーは、人を大事にするタイプで、たったひとりからの支援でも、糧とする篤い人物である。まったく異なる世界の、得体の知れない人からであっても、感謝の言葉に込められた想いに差はない。
彼からの言葉と、「ダンジョン内の店」の需要を知ったオーナーは、従来の現場作業者向けの保護具を、冒険者用の防具としても取り扱うことを決意し、売り場を拡大したのだという。
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