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面接のとき、そんなトンチキな話、聞いてねえよ。
と思ったが、どうも、このダンジョン出張店には制約があるらしく、いつでもウェルカム状態にはならないようだ。
ひとつ、店内にたった独りでいること。
ふたつ、時間帯は深夜。
あとは偶然? よくわからん。
ただ、俺はたまたま何故か選ばれたようだ。先輩は来月にはバイトを辞めることになっていて、俺は彼から引継ぎを受けている最中だった。
これも先輩から引き継がれた業務ということになるのだろう。たぶん。
――もしや俺、先輩にハメられたんじゃね?
先輩からオーナーに話が行き、俺は正式に「後継者」になった。
それに伴い、必然的に「異世界仕様の業務」は俺担当である。
つまり、異世界のお客様が帰ったあとの掃除――血痕を消す作業も、俺ひとりでやることになる。警察沙汰はまずい。
鑑識の人に分析なんてされようものなら、人間じゃなさそうな血液や、地球上のどこでもなさそうな成分の土など、地方のいち企業でごまかせないレベルの一大事だ。
不思議なことに、該当時間内は防犯カメラが停止しており、それでいて撮影時間は連続している。
つまり、あの瞬間のみ時空が歪んでいるのだ。
コンビニは異世界に行き、だからあの「ギルドカード決済」ができる。異世界の技術もすげえ。あちらの通貨を受け取っても仕方がないもんな。
ギルドマネーとやらがどう日本円に換算されているのか、俺にはよくわからないのだが、オーナーがなにも言わないのだから、俺が口を出すことはないだろう。
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