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彩人の絵が乾き、研悟はそれをシンプルな額に入れてくれた。
「ほうら、これで立派な作品だ」
「……」
彩人は相変わらず何も話さない。
だがその顔つきは、ここへ来てすぐの時より、ずいぶん明るくなっていた。
嬉しそうに額を受け取り、心路にしがみついた。
「すみません。額代を払います」
「結構ですよ。素敵な作品ですから、僕が額に収めたくなっただけです」
ありがとうございます、と心路は深く頭を下げ、彩人の手を取った。
「よかったね、彩人」
小さな画家の卵は、無言でこっくりうなずいた。
研悟宅をおいとまし、庭を通り、門まで来たところで二人は振り返った。
玄関のポーチには、まだ研悟が見送ってくれている。
手を振る彼に、彩人がそっと手を振り返した。
(彩人が、初対面の人に手を振るなんて!)
心路はそれだけでもう、明るい未来を予見した。
暗く沈んでいた胸に、光が射した心地がした。
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