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【プロローグ K】
ふと気が付いた時。
そこは何故か、良く見知った場所だった。
真っ白な壁で出来た三階建ての校舎。
私と、弟の良樹は、その校庭の目の前に突っ立っていた。
私たちは、この場所を知っている。
馴染みのある場所だ。
「俺たち、新潟のばあちゃん家に来てたよな?」
隣の弟が、怪訝な表情で私に確認してきた。
私たちは、東京から家族と共に、新潟に住む祖父母の家に遊びに来ていたはずだった。
「でもこれ……私たちの高校よね?」
だが、目の前にあるのは私と弟が通う高校の校舎。
私たちは酷く困惑した。
少し肌寒く、近くに植えられた木からは枯れ葉がパラパラと舞い落ちていた。
夏休みだからと祖父母の家に遊びに来たのに、これではまるで秋のよう。
更に私たちを不安にさせたのは静寂だった。風の音まで聞こえない。
近くを通る道路に人影はなく、自動車は一つも走っていない。
校舎からは、教師の声も生徒の声も聞こえない。
「俺たち、瞬間移動してきたとか?」
不安を紛らわすためなのか、良樹は冗談を言う時のように笑った。私も一瞬、そんな楽天的なことを考えたりもした。
だが何故、周りに誰もいないのか。
その答えは見つからない。
まるで、この世界に二人だけ取り残されたようだった。
祖父母の家からほんの少し離れた公園に、三人で遊びに行っただけなのに、一体何が起こったのか。私は必死で考えた。
だがそこで、私は重大な問題に気が付く。
「あれ……みみちゃんは?」
私のその言葉に、良樹はハッとなる。
一緒にいたはずの私たちの妹が、姿を消してしまっていたのだった。
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