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寝る前の日課
6月1日雨。
梅雨入りした空から梅雨らしい雨がバシャバシャ降り続いている。
連日ジメジメした空模様に心も体もカビが生えそうだ。
ここでいったん筆を止める。
僕は寝る前に日記を書くことを日課にしている。日記にはその日あった楽しい出来事を書くようにしている。
なにかいいことないかな。
頭の中をぐるぐるとかき回し、記憶の欠片を掘り起こす。
僕はリフォームの営業をしている。外壁に自社製の特殊な塗料を吹き付ける外壁塗装を一番の売りに、キッチンやユニットバスといった水回りのリフォームなども手がけている。
どれもウン百万を超す仕事だ。当然ながら簡単に仕事は取れない。とにかく一軒一軒ドアを叩いては少しでも話を聞いてくれるお客さんを探し歩きまわるのだ。
それにしても。なにかいいことなかったか……。
脳ミソにザクザクとスコップを突き立て、ぐるぐるほじくる。
うーん。あれにするか。
スコップの先にへばりついてきた記憶。
部長から掛けられた言葉だ。
なにかと言うと、
「頼みがある」と前置きされたあと、「おまえにしか頼めないんだ」と言われた。
女子更衣室の電球が切れていて、みんなが困っているから取り替えてほしい、部長に懇願された。
僕はさささっとその期待に応えてあげた。職場のみんなもきっと喜んでくれているはずだ。ヒーローにでもなったみたいで、とてもいい気分だった。
と、ここまで書いたところで、突然、すぐ近くに置いてあった携帯電話がブルブルと震えた。
ちょうど日記を書き終えたタイミングを見計らうように入ったメールに心臓が激しく動きだす。
いったい誰だ? ドキドキしながら覗き込む。
なんでもない。母からだった。何かと思えば、
「家を改築するから、あんたの部屋にあるガラクタを片づけて。それで、いるものあったら持って帰ってちょうだい。でないと捨てるよ」と書かれてある。
さっぱりした性格の母のことだ。本気に違いない。
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