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父からもらった日記帳
6月1日あめ。
くつがぬれた。でもたのしかった。
初日は、汚い字でシンプルにその日あったことが書かれている。
パラパラめくるがどのページも同じようなことばかり書かれている。
これでは父の期待するような考える力など身につくわけがない。
やがて最後のページになる。
6月30日あめ。
ランドセルがいっぱいぬれた。でもたのしかった。
久しぶりに読み返してみたが、苦笑いしか込み上げてこない。
僕はみぞおちに力を入れて深く息を吸った。
「悲しいことや辛いことを日記に書いちゃダメだよ。どんなことでもいいから。とにかく楽しかったことを書くこと。そのほうが毎日ハッピーになる」
ふと父の言葉が甦る。僕を呪文のように縛った言葉。
どんなことでもいい。とにかく楽しかったと書くこと。
幼い僕は自分の中でそう変換した。
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