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「お互い...、違うな、って感じて。電車で顔を合わせることはあるけど、もう、ほとんど話してない...。それで...」
「まだ、付き合っているんだと、ずっと思ってました...」
「隠してたの。飯塚君には、言えないって思ってて」
「なんで言えないの?」
砕けた口調だったからつい顔を挙げてしまうと、悲しんでいるような、怒っているような、そんな表情と目があった。
「私...、飯塚君のこと気になってた。星野くんと付き合い始めたのに、少しずつ、意識するようになってた。...別れ話が出たとき、飯塚君のこと考えてた。安心までして。......すっごく最低でしょ...」
「......」
「だから、言えなかったの。何度も気持ちを伝えてくれたのに、その度に断って、ひどいことも言って。それなのに、私別れたんだぁ、なんて都合良すぎだし、飯塚君に申し訳なくて、できなかったの」
「...そうだったんですね」
「だからずっと隠すつもりで。...諦めるつもりでいたんだけど...。...こういうことしてしまって...。飯塚君にも、佐々木さんにも...、申し訳ないことしちゃって...。本当にごめんなさい。...あとで、佐々木さんにも謝る...」
頭を垂れていると、パラパラポロンと電子音がした。
飯塚君のスマホだったらしく、ポケットから取り出して確認している。
「佐々木さんには、謝る必要ないと思いますよ」
「えっ、なんで。謝ることだよっ」
「ほら」
スマホを画面を向けてきた。
目にしたものに瞠目する。
笑顔の佐々木さんと、その肩に腕をまわす玉木先生。
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