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【Chapter20】涙の露天風呂
翌日は彼の楽しみにしていた温泉に立ち寄った。
露天風呂に浸かった私の目からは止めど無く涙が溢れる。
だが、このまま泣き続けるわけにはいかない。
彼は今頃、先にお風呂から上がって待っているだろう。
私は涙を拭うと手早く身支度をし、マッサージチェアで寛ぐ彼に声をかけた。
「お待たせ! 待ったかな。ごめんね。」
「ん、大丈夫だよ。ゆっくりできた?」
「うん。ありがとう。」
私たちはペットボトルのお茶を飲みながら少し会話を楽しむと帰路についた。
「ねぇ、ちょっとお願いがあるの。」
「ん、何?」
「少しだけ部屋に寄ってほしいの。写真撮りたい。」
4月からは事務所兼自宅の新居に住むことになっていた。
彼は、今の家での思い出づくりだと思ったらしい。
「うん、良いよ。」
私たちは共にマンションの階段を登った。
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