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【Chapter21】魂の伴侶
「こっち来て!」
私の声に彼が窓辺に歩み寄る。
身体を密着させるとシャッターをきった。
「次はこっち!」
ベッドで写真を撮った時のことだった。
私の目から不意に大粒の涙が溢れた。
急に黙った私に彼が視線を向ける。
「ごめ…ごめん。私、騙されちゃったみたい。約束…守れなくなっちゃった。ごめん。ごめんね。」
これからより多くの時間を共に過ごしていこうと約束をした矢先だった。
私は事業の立て直しために彼の元を離れなくてはならなくなった。
期間は未定。
事情を話しながら、しゃくり上げて泣く私を見た彼が、右腕を自分の目元に当てると拳をギュッと握りしめたのが見えた。
そして、大きく息を吸い込み深呼吸をすると
「僕は大丈夫。これは第一幕の終演。だからまた会える。」
そう言って私を抱き寄せ、頭を撫でると、おでこにキスをした。
いつ、またこの愛おしい腕の中に戻れるのかわからない。
私は流れ溢れる涙を止めることが出来なかった。
「お互いがちゃんと生きていたらまた必ず会えるから。」
彼の優しい声が耳に響き、いつか彼が言っていた言葉が蘇る。
『僕らは魂の伴侶だから。』
彼に抱きしめられながら、この先、何度生まれ変わっても、彼の伴侶でいられることを心から願った。
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