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【Chapter5】Face line
「んー。仕事があったんだからしかたないよ。」
レストランへの道に車を走らせながら彼が答える。
そこには何の嫌味もなく裏もない。
彼はそういう人だ。
嘘がなく正直。
思ったことはハッキリ言うが、裏腹な思いを抱えながらチクリと人を刺すようなズルいことはしない。
だからこそ
「老けたんじゃないの?」
という彼の言葉が真実であることは明白の事実であり、変えようのない現実だということだ。
彼は、私よりもひと回り以上若い。
人としても男としても、これから磨きがかかり、ますます色気が出るはずだ。
何気ないひと言が、どれだけ私のことを脅かしているかなんて知る由もないだろう。
運転席でハンドルを握る彼のシャープな顎のラインを眺めながら、私は更なるモヤモヤと対峙していた。
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