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「ごめん。スマホの電池が切れてて。」
「なんだぁ、そうだったんだ。」
鈴音さんが笑う。
「取引先の部長に誘われて飲みに行ってて、店を出てから気づいたんだ。」
「そうだったんだね。」
「本当にごめん。」
「佐々木さんのせいじゃないよ。私がちょっと、心配しすぎで・・・。こちらこそごめんなさい。取り乱して。」
「嬉しいよ。取り乱すほど心配してくれて。」
「あの・・・。」
「ん?」
鈴音さんがモジモジしだす。
「スマホの充電して、私からのメッセージ見たら、たぶんビックリすると思うの。ちょっと引くかも。」
件数が多いんだな、と察する。
「引かないよ。鈴音さんがそれだけ俺のこと想ってくれたってことでしょ。」
俺が微笑むと、鈴音さんが赤くなる。
「ああ、雨、鬱陶しいな。」
「いまさら?」
「傘さしてると遠いんだよ、距離が。キスしたいのに、この距離だと、する前に鈴音さんにバレて止められる。」
クスクス笑う鈴音さんにキスをしようとすると、やっぱり手で制される。
「ほらね。」
俺は嘆き、懇願する。
「キスしたい。キスしていい?キスさせて。」
「家まで待って。」
ムーッと口をへの字に曲げて鈴音さんを見る。
「子供ですか?」
笑いながら聞く鈴音さんの手を取って走り出す。
「わわ、なんで走るの?」
「我慢できない。急いで帰る。」
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