ここに墓標を立てよ

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 この屋敷はローゼンハイム家の別邸だがレオンハルトの部屋も有ると言う。ヘルツは伯爵にお伺いをたて、息子の部屋を見せて貰った。  レオンハルトはこの屋敷に長く滞在することが多いか、何処でも本邸のように過ごしたい気持ちが強かったに違いない。夏にしか来ていなかった割にはものがかなり多い。クローゼットは服で埋め尽くされ、別のクローゼットにはピッケル、ザイルといった登山用具が一式入っており、机には本や真新しいインク瓶が使いかけのまま置いてある。またマントルピースには写真が沢山飾られている。大多数はギムナジウム時代のものらしい。真ん中に居るのがレオンハルト様だろう。野生的に笑っているレオンハルトに対し、他の男の子たちははに噛んだり、恥ずかしそうに俯いたりしているのが印象に残った。 「あなた、良いかしら?」  ヘルツが返事をするとドアが開いてレオノーラが現れた。 「レオノーラ? もう夫人は大丈夫そうか?」 「ええ、後はメイドや侍女の方に任せるわ」と言いながらレオンハルトの部屋を見回す。 「レオノーラ、お前は宿に戻っても構わないぞ」  レオノーラは首を振った。「いいえ、大丈夫よ。……実はあなたのお耳に入れたいことが有るの」  ヘルツは目を瞬かせた。「なんだ? 何かあったのか?」  返事は無い。レオノーラはヘルツでは無く、ヘルツの後ろにある写真たちを見ている。 「この真ん中の方がレオンハルト様?」 「そうだ。レオンハルト様はギムナジウムでは慕われていたんだな。こんなに沢山の仲間に囲まれて……」  レオノーラはヘルツを見た。「あなた、それは違うと思うの」  ヘルツは絶句した。「違う? どういう意味だ? 慕われていたから写真があるんじゃ無いか」  レオノーラはなおも否定するように首を振る。「アルバン、何も親しい人間だけが一緒に写真に映る訳じゃないわ。この男の子たち、誰も笑っていない。笑っているのはレオンハルト様だけだと言うのはおかしいわ」 「緊張していたのかも」 「それにまだ有るの。さっき伯爵夫人がレオンハルト様が良い子だったと仰った時、メイドの1人が失笑したの。あの顔を私、家庭教師時代に何度も見たわ。あれは伯爵夫人の言葉を信じる私が心底おかしいと言う顔だった……写真の男の子たちは緊張していたんじゃない、怯えていたのよ。……レオンハルト様は慕われていたのではなく、
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