チャイナタウン

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3 タック、タック、タック・・・  ノックの音は続いていた。ツケられていたのか?いや、パトカーのサイレンは聞こえなかった。だが、組織の連中ならここを知っているはずだ。隣の中華飯店の油ぎった臭いに、胸がむかついた。 タック、タック、タック・・・  執拗なノックの音が、男の精神を追い詰めた。右腕は、きつく縛って止血したせいで真っ青に変色し、だらりと垂れ下がっていた。左手には25口径のベレッタ。リリーは何発撃ったのか?右手が動かない以上、マガジンを抜いて確認することもできない。スライドを引くと、少なくとも1発の弾が装填されていた。 タック、タック、タック・・・  一発だけあれば、それで十分だ。男は左手の親指をトリガーにかけた。そして冷たい銃口を顎の下に当てた。
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