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   この日、バーンシティの素晴らしき都会っぷりに気分が悪くなったルーナは、昼食後の三限をサボタージュしていた。腕に着けられたリングが赤く点滅し、欠席を注意する音を発していた。 「講義に出席してください。講義に出席してください。講義に......」 「なによ! うるさいわね、放っておいて!」  音に耐えかねたルーナはガチャガチャとリングを外し、床に叩きつけた。それは、傷ひとつない綺麗な床に濁点を残し隅へと滑っていった。音は鳴り止まない。 「ああもう!」  日頃の鬱憤を全てぶつけるかの如く足で数回踏みつけると、リングは諦めたかのように眠りについた。廊下の静寂に満足し、ひとつため息を吐くと、彼女は再び歩き始めた。向かう先は決まっていない。ただ、こんな街にもどこか面白い場所はあるのだと言い聞かせながら曲がり角にある階段を大きな音を立てながら降りた。  ルーナにとってこの学校の良いところは、やいのやいの小煩い教師がいないところであった。お陰でこうやって講義をサボって徘徊することができる。 「機械が機械に勉強を教えて何になるのかしら。素敵なものは隠されているもの。自分で見つけ出すしかないわね」  腕にまとわりつく厄介な重りを外した解放感から、ルーナは鼻歌混じりに言った。そして考える。 「無駄のない街の無駄を見に行ってみようかしら」  思い付いて彼女は口角を上げる。指を鳴らしガッツポーズをした。 「私ってば最高の冒険家だわ。コロンブスもびっくりよ」  
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