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家に帰ると机の上にパンとマーガリンが置かれていた。ほとんど毎日と言って良いほどルーナの母は夜中まで働いていた。低賃金で、ロボットを作る機械技師をしている。娘のルーナでさえ、母と顔を合わせる時間はほとんど取れない程の忙しさであった。
ポケットからくしゃくしゃの煙草を取り出しながらルーナは愚痴をこぼした。
「ひとり娘よりロボットの方が愛らしい?」
パンに対して皮肉を投げつけるも、その声は沈黙に飲み込まれていくだけだった。ルーナは軽く舌打ちすると、机の上に置いたライターで煙草に火をつけ、肺にその煙を深く染み込ませると、ため息混じりに煙を吐き出した。
一本の煙草を吸い終えるまでの間、ルーナはぼんやりと温かいスープを想った。
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