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しかし僕達が自分を嵌めようと画策している事が判明し、美香子は決断した。樫村探偵は美香子の依頼を受け、和香子に近づき、そうとは知らない和香子は意気揚々と樫村探偵を美香子に紹介したのだ。
「でもどうしてわざわざそんな真似を……」
「最後のチャンスだったのよ」
うな垂れる僕に、美香子は毅然と言い放った。
「あなた達が本心から私を陥れようとしているだなんて、信じたくなかった。だから樫村君が、提案してくれたの。あなた達の本心を図ろうって。もしどこかであなた達が自分の過ちに気付いてくれるようなら、まだ考えようもあるからって。でも……」
何もかも振り切ったようなさっぱりとした顔で、美香子はテーブルの上に一枚の紙を広げた。
離婚届だ。
「これで終わりにしましょう。私も、あなたも。私達の関係も、化かし合いもこれで本当に最後よ。もうこれ以上、嘘をつくのは終わりにしましょう」
何もかもが美香子に見透かされていたと思い知らされた僕に、拒否をする理由も気力も残ってはいなかった。
僕は肩を落とし、差し出されたボールペンを手に取った。
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