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凍り付く僕の前に、美香子は別の写真を並べた。
どの写真にも明らかに僕と和香子とわかる二人が写っていた。ホテルに入って行くような生易しいものではなく、車の中やベッドで実際に行為に及んでいる生々しいものまである。しかもそのベッドは――
「私のベッドで妹を抱くって、どんな気分? 私が知ってる限りでも、トータルで三十八回。バレないと思っていたの? そこで私がどんな気持ちで寝ていたか、一度でも想像した事はある? あなたって本当に、おめでたい人ね」
美香子の顔に浮かぶ穏やかな笑みに、ぞっと寒気が走った。
その時になって僕はようやく、事態に気付いた。
踊らされていたのは、僕達の方なのか。
「ちょっと待ってくれ。何がどうなってるんだ。頭がおかしくなりそうだ」
「もうとっくの昔からおかしいじゃない」
美香子はため息とともに言った。
「あなたはもうおかしくなってるのよ。残念だけど」
僕と和香子の関係が始まって間もない段階から、美香子は気づいていたらしい。
思い悩んだ美香子は旧知の間柄だった樫村探偵に相談した。彼は元々、美香子の高校時代の同級生だったのだ。
樫村探偵の手を借り、僕達の関係が真っ黒であると確信を得るに至ったものの、美香子はそれが一時の過ちであると信じ、静観を続けたらしい。
彼女にとっても、夫と妹という最愛の二人をいっぺんに失うのは耐え難い事だった。
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