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「我々もどうしてもお前達の技術が必要なのだ。わかってくれ。恋人や家族なら、この世界で新しく作ればいいではないか。そうだ、それなら何もかもが解決する。元の世界なんか忘れてこの世界で永遠に過ごしたっていい、そうだろう?」
その言葉を、男はどう受け取ったのか。彼は何度も首を振って、ぼそぼそと何かを呟いたあと――何もかもに絶望したといた面持で、その場から立ち去ったのだった。
確かに、地球人の寿命は短い。だが、それでも最近は八十年くらいは平均寿命があるというではないか。二十年も残した状態で家に帰してやるのに、それで不満と言われてはこちらも“なんで?”としか言いようがない。本当は死ぬまでこの世界にいてほしいところ、最大限の譲歩をしているというのに。
――しかし、他にも地球に帰りたいエンジニアがいるのか。困ったものだなあ。
仕方ない、とジャスティンは決意する。飴と鞭なら、断然飴の方が自分は得意だ。
――うむ、ならば全員にベースアップを約束しよう!この世界の美男美女と巡り合える場所も用意しよう!新しい家族ができれば、彼らの不満も解消されるはずだからな!
だが、既に歯車が壊れていることに、ジャスティンは気づいていなかった。
クロサワはこの対面をしたその日の夜に、首を吊って自殺。
他にも数名のエンジニアが命を絶った。
そして。
『ドロイネイド王国第三十八代国王、ジャスティン・ドロイネイドであるな?』
それから数日後の、今。魔法の縄で縛りあげられたジャスティンの目の前に、神がいる。この魔法と科学文明が栄える世界の唯一神たる荘厳な髪が。
石像でしか見たことのなかった、長い髪に長い髭、聖なる一本角を携えた巨漢の老人は。憐憫と軽蔑の目で、ジャスティンを見下ろしたのである。
『何故、異世界転移の魔法を乱用した。あの魔法が禁忌であると、先代国王に教わっていなかったのか』
「た、確かに使うなとは言われていました!しかし主よ、私はこの世界のためにっ……!」
『言い訳するでない、一国の国王たる者が、なんとも見苦しい!』
凄まじい威圧感。あわわ、と震えながら黙るしかないジャスティン。
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