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『何故、世界同士に壁がある?それは、異世界同士が基本不干渉であるからに他ならない。世界同士がかかわりあって余計な文化が流入すれば、本来あるべき世界の進化や生まれるべき文化を阻害するがゆえ。そして、別の世界の人間の人生を破壊する権利は誰にもないがゆえぞ。お前は自分の、自分達の世界の都合しか考えなかった。お前が無理やり異世界から連れてきた人間達が、どれほど人生を破壊されたかを考えたことはないのか。そして、異世界文化が流入した結果、本来もっと栄えるべき魔法文明のあるべき進化が捻じ曲げられたことに気づかなかったのか』
まさに愚かなり、と神は王を叱責する。
『なんと怠惰の極み。この世界の住人の力だけで、問題や困難を解決する努力を怠り、異世界の住人を犠牲にしてそれを成し遂げようなどと……そのような道理がまかり通ってはならぬ。お前達には罰を、異世界人達には救済を与えねばならぬ』
「な、何をなさるのです……!?」
『決まっている。貴様が異世界人を最初に呼んだその日まで時間を撒き戻し、貴様らの得た異世界に関わる技術を全て剥奪するのだ。当然、二度と異世界転移魔法も使えない。貴様は今日までの“便利で怠惰”な生活の記憶を抱えたまま、不便な世界に苦労しながら、愚鈍な己への冷たい目を受けながら、もう一度人生を生きるといい』
「そ、そんな!待ってください、待ってください神様、ねえ待って……!」
ああ、自分はそんなに間違ったことをしたのだろうか。
若い姿に戻ったジャスティンは思う。異世界人を呼べなかった世界には、便利な機械が一切ない。それに不便を覚えつつ、苛立ちながら荒れた生活をすれば、すぐに家臣からも民からも不満が飛んできた。元々けして有能な王ではなかったジャスティンは、異世界人達の力なくして名声を得ることなどできなかったのである。
やがて二百歳にもなる頃、ジャスティンはクーデターによって国を追われ、身一つで辺境の地へと命からがら逃げ出すことになる。
そして晩年までを、みすぼらしい小屋の中で一人さびしく暮らすに至るのだ。
遅すぎる後悔に、泥沼のように浸ることになりながら。
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