夏のカブトムシ

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「なぁに、大丈夫さ。きっと、また来年会える」  穏やかな笑みを浮かべるおじいちゃんの横顔を見た。おじいちゃんは僕を見てから、視線を穴に落として目を閉じた。 「土から生まれて土に還る。生きているもの全てに終わりがある。花も草も木も動物も。そして人も。だけどなぁ、姿かたちを変えてじいちゃんたちの元に帰ってくるんだよ。  このカブトムシは土の栄養となり、新しい次の命をつくる手助けをする。そうやって命が繋がっていくんだ。人も同じだ。死んでしまっても星や花になる。風に雲に乗って生きている者たちの元に戻ってくる。ウソなんかじゃねぇぞ」  口をぽかんと開いて戸惑っている僕に気付いたおじいちゃんは、にやりと口の端を上げた。 「ご先祖様たちはなぁ、いつでもどこでも俺らを見ているんだ。だから悪さはしちゃいけないよ」  おじいちゃんはポンと僕の頭に手を置いた。 「さあ、家に戻るぞ。そろそろトマトが冷えて美味しくなっている頃だ」  先を歩き出したおじいちゃんの後に着いていく。僕はカブトムシを埋めた方向にちらりと目をやる。土の中に眠る大切な宝物。空は真っ青で蝉の声が聞こえる。 『きっと、また会える』  おじいちゃんがそう言ってくれたから、本当にそうなる気がした。あのカブトムシは暑くないかな。土の中は涼しいといいな。僕はそんなことを考えながら家の中に戻った。
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