亜由子ありがとう

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私は中村商事という会社を経営していました。 中小企業でしたけれど、コロナがあっても大崩れすることなく、なんとか乗り切って来ました。 息子は留学したまま向こうで家庭を持ちましたし、娘は嫁に出したので跡取りは考えず私一代きりで、信頼できる同業者に譲り渡したところでした。 私は苦労をかけた妻の亜由子とリタイアした後は旅行などしてゆっくり過ごすつもりでいたんです。 それが、こんなことになるなんて人間なんてわかりゃぁしません。 亜由子は病気であっという間に亡くなってしまったんです。 せめて看病くらいさせて欲しかった。 はっきり言ってあの後の私は亜由子を追って死ぬことばかりを考えていた気がします。
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