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広い家にひとり、亜由子の遺影の前に座って気づいたら何時間も経っていたなんてこともざらでした。
こんな私を心配して娘が暫く来てくれていました。
娘から簡単な炊事、洗濯、掃除などを教えてもらった際にどれだけ亜由子に頼っていたかを思い知らされたのです。
「よーし、お父さんも頑張って覚えてこの次、お前に会う時はビックリするくらい上達しててみせるよ」
から元気で言うと安心したように娘は帰って行きました。
ひとりになると、家にいても届け物が来たり、セールスマンが来たり、集金が来たり、近所の方が回覧板を持って来たりと意外に忙しいものなんだなと思いました。
そう言えば亜由子はよく、初めて来たいかにも新人の営業マンや汗だくで頑張っている宅配便の人たちにサイダーや缶コーヒーをあげていました。
亜由子が
「私がなんでそんなことをするかって言うとね、うちの子たちも外に出た時、優しくして貰えたら良いなと思って。情けは人の為ならずって言うじゃない」と言っていたのを思い出します。
トイレ掃除も毎日やっていました。
お嫁に来る時、お母さんが「お手洗いをきれいにしていると子どもが良い子になるんだよ」と言われたからだと話してくれたことがありました。
やはり母親だから子どものことが一番気がかりだったんだろうと思います。
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