亜由子ありがとう

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わたしも一人でいつまでも家にいるのも引きこもりになりそうでまずい。 働こうと思い始めました。 お金のためではなく、自分の精神衛生上のために。 適当に身体を動かして、車の運転も好きだから何かノルマなどがないルート配送のようなものがいいかも知れないと見当をつけて探してみたのです。 するとスーパーやコンビニの決まったルート20店舗の空きダンボールの回収作業をするパートの職に目が止まりました。 基本一人なので気を使うこともないし、汚れるわけでもないのでこれに決めました。 お給料は社長時代の10分の1くらいでしたが気になりませんでした。 なにせ、お金目的の就職ではないからです。 初めの1週間は会社の人が付いてくれたので覚えるのに助かりました。 いよいよ、今日から独り立ちの日。 少しオーバーだけど亜由子にお線香をあげて「行ってくるよ」と手を合わせました。 緊張しながら、一店舗づつ回り無事にこなせて、一安心の初日が終わりました。 帰宅して真っ先に仏壇に行き手を合わせて 「亜由子疲れたよ〜」 それから風呂の準備をしている間に、我慢できずにビールをあけてしまいました。 1口目のビールが喉を通過すると心地よい疲れがむしろ嬉しいとさえ感じたのです。 「やはり仕事をした後のビールは最高だな」 亜由子が座っていた椅子の方を見て言ってみました。 労いの言葉より 「あなた、まだ初日よ!明日からもまた頑張ってくださいよ」 叱咤激励の言葉が聞こえてくるようでした。 そんな一生懸命な日々を繰り返しているうちにあっという間にひと月が過ぎ去って行きました。
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