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◆5 図書室
そんな中学時代を過ごした俺は、もちろん学校では浮いた存在となっていた。
まわりの連中はまだきれいな制服を身にまとい、光溢れる笑顔を浮かべていたのに、俺はそこから距離をおいて離れていた。
似たようなやつらなら他にもいたから、寂しくなんてなかった。学校というのは否が応でも、おのれが陰陽のどちら側に近しいのかを、あらためて突きつけられる場所なのだろう。
グラデーションのように、生徒はその陰と陽の間に散らばっている。間の行き来を忙しくするやつもいれば、ずっと陽で笑っているやつもいる。たまに転がり落ちるように陰に来るやつもいれば、這い上がるように陽へ近づこうとするやつもいた。
俺はずっと、陰の中にいた。抜け出すことなど考えもせず、当たり前のようにそこにいたんだ。
最初は教師も、そんな俺に目をかけていたのだろう。入学当初はやたらと声をかけられていた。
しかし、あの魔女事件があって以来、大人という存在がどれほど信用ならないものかを俺は知っていた。いや、大人に限らない。人間なんて全部クソッタレだという今も貫く信念は、この時期に確立されたのだ。
さんざん無視をしていたら、中学二年生の頃には諦めたのか他の生徒に忙しくなったのか、そんなに声をかけられることはなくなった。簡単に投げ出すくらいなら、最初から声をかけるなと思った。
安直な言葉を借りるなら、俺は不良だった。
けれど煙草も吸わなけりゃ、バイクで走り回るわけでもない。ただ授業をさぼったり、時折ふっかけられる火の粉を払って喧嘩を繰り返しただけだった。人畜無害な不良だったから、逆に褒められるべきだったんじゃないの、なんて思っていた。
それでも、学校にはきちんと通っていた。
べつに行きたい場所でもなかったが、家に居場所があるわけでもなかった。街へ出れば補導されるわけで、それが面倒臭い俺はやっぱり、きちんと学校へは行っていた。子どもという身分は、とても不便で不自由だ。
そんな俺がよく足を運んでいたのは、図書室だった。
べつに本が好きだったわけではない。図書室の奥まった場所にある、大きなテーブル席。そこの椅子を三つ並べて寝転がると、ちょうど良い場所ができあがるので入り浸っていたのだ。
ベッド代わりのそこが唯一、俺が気を休められる場所だった。
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