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「ママ、このねこなんなん?」
「さっき言ったでしょ。スタンプラリー中に出会ったの」
「鍵屋さんのスタンプ?」
「あら、よくわかったわねぇまーちゃん」
「鍵屋のレンタルか何か? 変なセールスに捕まんなよ」
ママはのんびりしていて、うっかり妙な物を買わされたりすることがある。今回もそんな感じだろう。うちはパパが単身赴任で家にいないので、僕がしっかりしないと駄目なのだ。
「まーちゃん、よく鍵を締め忘れるでしょう?」
「は?」
「いつか空巣に入られないかって、ママ心配」
「わざわざ鍵が締まってるかどうかなんて、確かめる? 他人がよそんちの玄関ガチャガチャやってるなんて、もうそこから怪しいじゃん」
「空巣の侵入で一番多い原因は無施錠です。ちょっとそこまでという油断が危険を呼びます。ごみ出しで家を留守にする短時間に、被害に遭ったケースも見られます」
僕とママの間に入って、ろっくねこが機械的に話し始めた。
「また、空巣被害に遭うだけならまだしも、鉢合わせした場合は身体にも危険が及びます。よって、家を空ける際は短時間でも施錠してください。ねこはその為のろっくねこです。万が一空巣を発見した場合、ろっくねこは戦えないので警察に自動通報する機能がついてます。ご家庭に安心をお届けします」
「……あ、そう」
急に真面目な感じで畳み掛けられたので、僕はちょっと黙り込んだ。
「ね、いいでしょ。ろっくねこちゃん」
「ママはこんな感じで鍵屋に言いくるめられたの?」
「だって大切かなって。ほらぁ、パパもいないし、ママは女だし、まーちゃんだって小さいし」
「僕はもう中一だよ!?」
「はいはい」
ろっくねこはアピールポイントを伝え終えたのか、なんとなく手持ち無沙汰で突っ立っている。ずっとそばに立たれていても気になるので、僕は空いているソファの隣をぽんぽんと手で叩いた。
「ここ座ったら」
「まーちゃん、鍵を締めますか?」
「今鍵は締まってるから大丈夫だよ」
「ねこは家の中の鍵を見てきます」
二足歩行のろっくねこは、一人で二階へ続く階段を上がっていった。その動きは自然で、中に人が入っているのかと思うくらいだ。
しかし鍵の管理しか出来ないねこ型ロボット。需要あるのだろうか。
二階でガタガタっと物音がした。
ろっくねこが何かをやらかしたのだろうか? 腰をソファから浮かしかけたら、警報音が鳴り響いた。
「空巣です。住所は○○町△番地××号、サトウトシオ様宅、至急……」
どうやら二階の窓の鍵が開いていたらしい。あれ、これ意外と使えるな。身に覚えがある僕は、ろっくねこに感謝せざるを得なかった。
おわり
防犯意識を高めましょう(U´・ェ・)というお話?
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