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 僕の家に、昨日はいなかったねこがいる。夕方中学校から帰ってきたら、リビングに突っ立っていたのだ。  ママが商店街のスタンプラリー中に出会ったそうで、何故かそのまま家について来たらしい。 「ねこはろっくねこです」  全体的につるりとした外見のねこは、どことなく機械的な声で僕に名乗って、とことこと玄関まで行くと、鍵をしっかり施錠した。  僕の思っているねこは、ふさふさとした四足歩行のコンパクトな外見だったけど、ろっくねこは僕と同じくらいの身長で、二本足で歩いていた。  なんか不思議。  てか、話さないよなねこ。 「ろっくねこ? ギターでも弾くの?」 「ねこは鍵を締めたり開けたりします」 「あー、そっち? さっき玄関の鍵締めてたよね。なんでうちに来たの」 「鍵の管理をしに来ました」  管理……と言われましても?  リビングで宿題をしながらろっくねこと話していたら、ママがキッチンから僕に言った。 「話していないで、宿題」 「だってママ、このねこは何?」 「まーちゃん、ねこ欲しかったでしょ」 「いやでもこれロボッ……」  ロボットだろう、どう見ても。  続けようとしたら、ろっくねこは僕をきりっと見た。 「ねこはろっくねこなのでロボットではありません」 「んや、あのさ……」 「宿題をしちゃいなさい、まーちゃん」  夕食の準備をしているママは、ろっくねこの存在をあまり重要視していないのか、淡々と言った。 「やってるよー」  僕のそばに突っ立っているろっくねこが気にはなったものの、やらなければならない数学の宿題がある。しばらく悪戦苦闘していたが、途中で問題に詰まる。 「ねえねえ、ねこさん」 「まーちゃん、鍵を開けますか?」 「鍵じゃなくてさ、ここの問題わかる? ロボットなら、わかんないかな。計算機能とかついてる?」 「ねこはろっくねこなので計算はしません。あとロボットではなく、ろっくねこです」  あっさりと断ってくるろっくねこに、思わず軽く眉を寄せる。他力本願で少し期待してしまった僕がいけないのだろうけど、ロボットならこのくらい出来てもいいのではないか。 「計算は出来ますがしません。ろっくねこですので」 「──出来んの?」 「出来ます。ねこは高性能ですから」 「んじゃ教えてよ」 「ねこはろっくねこなので鍵の管理をします」  はい出た鍵の管理。  そもそもうちになんで鍵の管理をするねこ型ロボットが必要だろうか? ママに胡乱な視線を向ける。
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