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「ごめん、私帰るわ。」
「おい!ちょっと待てよ!」
「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
彼女は、俺の制止を振り切って部屋から出て行った。
それに続いて俺も泣き続ける妻の横を通り抜けてリビングに向かう。泣き声は部屋を移動してもハッキリ聞こえるので頭がおかしくなりそうだった。いざ、外へ出ようとした時にスマホの着信が鳴った。
画面には飲み仲間の名前が表示されている。
「おーどうした?」
「卓本…保田が車に轢かれて死んだ。俺も未だに信じられねぇよ。」
飲み仲間でも一番俺と趣味や煙草など気が合う保田。
明後日、アイツと飲みに行く約束をしていたのに…信じられない。
「嘘だろ?そんな信じ…「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
妻の鳴き声が煩くなり会話が聞こえない。
俺は一旦電話を切って妻に文句を言いに寝室に向かった。
すると、また着信が鳴った。
今度は実家の母親からだった。
「母さん、今忙しいから後でにしてよ。」
「宏司。お父さんが!お父さんがね…死んじゃったの…。」
「は?嘘だろ…。」
「ビルの屋上から落ちてきた鉄骨が頭に当たって…即死だったみたい。…お父さんの顔が見つからないの。どこ行っちゃったんだろうね…。」
電話越しから聞こえてくる嗚咽が、現実に起こっていることを知らせる。
小さい頃、釣りや野球を教えてくれた町1番人気者の親父。
去年、ガンの手術を終えて順調に回復してきたのに…。
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