邪魔はしてこないけどどことなく邪魔なねこ

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邪魔はしてこないけどどことなく邪魔なねこ

 拝啓、神様へ。  確かに僕はペットが欲しいとお願いしました。猫でも犬でもなんでもいいから、何か飼えば友達がいなくても寂しくない、と思ったからです。うちはペット禁止の家だからそれは叶わぬ夢だと諦めていたけど、それを叶えてくれてありがとうございます。  でも、神様。  一体誰がペットならなんでもいいと言ったでしょうか。    見た目は確かに猫です。本人? 本猫? も自分は猫だと言っているのだから、これはきっと猫なんでしょう。背は僕よりもちょっと大きくて、もふもふの毛が無くてつるりとしていて、某猫型ロボットよりも可愛らしい絵本で見た様な顔付きをしていても猫だって言うんだから、これは猫なんでしょう。頭が痛くなる程の最高な贈り物を僕にくれて、本当にありがとうございます。 「あっ」  高学年になっても変わらず寝る前に書けと学校から言われている日記帳にそう書いていると、消しゴムが手に当たってしまい床に転がり落ちていく。ころころと跳ねながら転がる消しゴムは、さっきからピクリとも動かず部屋の隅でじっとつっ立ている猫型ロボットの足元に当たり止まった。 ... ... ... ... ... ... 「あのー」 「なんでしょう」 「消しゴム、拾ってくれませんか? ...もしかして、これすらもできない?」 「はい。ねこは『しないねこ』なのでなにもしません。けしごむをひろうのはけしごむひろいねこがします。」 「...ひろいねこじゃダメなの? それ」 「ひろいねこはまえはいましたが、なんでもひろってきてしまうためはいばんになりました。ひろいねこはたくさんいます。ごみひろいねこやすてねこひろいねことかいます」  「捨て猫を拾ったのは僕の方なんだけどな...」とぼやきつつ僕は椅子から立ち猫の方まで向かい、消しゴムを拾って椅子に戻る。椅子をくるりと回転させ一部始終を無言で見届けたねこ、『しないねこ』をじっと見つめた僕は思わず深い溜息をついてしまう。
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