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「ならばリス。おまえの身体ぐらいなら、根っこのすきまを通っていけるだろう?」
「じょ、じょうだんはやめておくれよタヌキ。根っこは太いばかりじゃないんだよ。細い細い根っこが、たくさんたくさんあるんだよ。からめとられちまったら、ぼくだってむりさ」
「そうだイノシシくん。きみのいつもの体当りで、根っこを壊してしまえばいい」
「それはいい考えだ!」
「イノシシくんの勢いなら、太い根っこだってバラバラになるよ」
「どうしておれが、そんなおそろしいことをしなきゃならないんだ」
イノシシはふんがいします。
動物たちは、さわぎます。
タヌキはタタっと走り、根っこの中心へいきますと、中にいるキツネにこっそりと言いました。
「ほれみろ、あいつらときたら、いつもはキツネに助けてもらうくせに、助けようともしやしない。はくじょうなやつらだ」
「よいのですよ、タヌキさん。見返りはいらないのです」
「……だからばかなのだ、おまえは」
フクロウがホウホウと鳴きました。
雨が降りはじめました。
動物たちは、あわてて雨宿りにむかいます。
タヌキは根っこのもとで、うずくまりました。
「タヌキさん、こちらへおいでなさいな」
「二匹も入れば、狭くなるだろう」
「いつものことではありませんか。木の葉を掃除しましたし、伸びた根っこも、どかしました」
「ならば、そうしようか」
「そうしましょう」
タヌキは根っこの間に顔をつっこんで、身体をすべりこませます。器用にすきまを進むと、根っこにおおわれた空間へたどりつきます。
そこは根っこの下にある空洞で、キツネとタヌキが小さな頃からあそんでいる、秘密の隠れ家でした。
たくさんの動物たちが集まってくるのがいやで、タヌキは「根っこ広場の噂」を流したのです。
嘘つきタヌキがいうことなのに、それを「嘘」だと思わずに、みんなはすんなりと信じました。
森の動物たちは「噂」にびんかんで、疑うことをあまりしないのです。
「冬のあいだは、やっぱりさむいもんだね。やっぱり夏にくるところだよ」
「そうですねぇ。冬はやっぱり黄金草原です」
「ちがいない」
二匹は寄りそって、眠りにつきました。
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