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その森には、たくさんの動物たちが、それぞれ場所をかまえて暮らしていますが、大きな木が生えている広場は、そのかぎりではありません。
うねうねとした根っこが、土の中から飛び出して、他の根っことケンカをしているように、あっちこっちにからまっているのです。
暗い夜になると、まるで根っこがおそいかかってくるようにもみえるので、怖がりのクマなどは、おそろしくて近寄ることもできません。
それに、根っこ広場にはこわーい噂もあるのです。
嘘をつくと、根っこにつかまってしまうとか。
からみあった根っこのろうやに入れられて、出てくることができなくなってしまうというのです。
だからみんな、広場には近づきません。
うっかりつかまってしまったら、たいへんです。
「そんなことがあるもんかい。根っこなんて、引っこ抜いてしまえばいいのさ」
タヌキは、おかしそうに笑いました。
「ではタヌキさん、根っこ広場で嘘をついておくんなさいよ」
「嘘なんてものは、つこうと思ってつくものではないよ」
「なに言ってるんだい、おまえさんはいつだって嘘ばかりじゃないか」
「そうだよ、嘘をつかないことがあったかい?」
タヌキの嘘にいつも振りまわされている動物たちは、口々に文句をいいます。
けれどタヌキは、鼻をならしてわらうのです。
「いやだねぇ。知ってるかい? 嘘を通せば、本当になるんだよ」
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