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「まったく、タヌキの言うことは、あてにならないよ」
「まあまあ、タヌキさんだって、悪いやつじゃないんだから」
「キツネはすぐそうやってタヌキをかばうんだ。本当に、お人好しだねぇ」
タヌキの嘘に、いちばん迷惑をこうむっているのは、きっとキツネでしょう。
お人好しのキツネは、いつだって誰かの話をしんけんにきいて、手助けをしてくれるのですから。
その「誰か」というのはタヌキだけではありません。
森の動物みんなです。
けれど動物たちは、めいわくをかけるのはタヌキだけだと思っています。
キツネがいつだってたいへんなのは、タヌキのせいだと思っているのです。
コマドリが歌いつづけて、みんなが飽きてしまっても、キツネはずっと歌をきいています。
泣いてばかりいるウサギの隣にすわって、コンコンと話をきいてあげます。
怒りん坊のカメをなだめて、アライグマと一緒に甲羅をきれいに洗ってあげたりします。
のんびり屋のワニとひなたぼっこもしますし、いたずらをしたリスを連れて、いっしょに謝りにまわったりもするのです。
今日もキツネはあちこちをひょこひょこ歩きながら、ときおりかけられる声に、ニコニコあいさつをかえしています。
森の中を歩いて、黄金草原に辿りつきました。
黄金草原は、そのなまえのとおり、黄金色にひかる草原がいっぱいにひろがっている場所です。
風にさわさわと揺れると、シャラシャラときれいな音を響かせるため、キツネはこの場所がだいすきでした。
じぶんの毛皮のいろにも似ていて、身をかくすことができる場所でもあります。
考えごとをしたいとき、キツネはいつもここへ来ます。伏せっていると、身体をすっぽりとおおってくれますから、誰にも見つからないからです。
いつだってみんなの世話をやいているキツネだって、たまにはのんびり、ひとりになりたいこともあるのです。
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