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私達の話
真夜中に地下室から聞こえるのは、狼のような遠吠え、あるいは不気味に鳴くカラスのような叫び声。天国にいる人の幸せに満ちた歓喜の声でもあれば、地獄にいる人の苦痛の叫び声でもある。
これらの声は、全て1人の人間によって発せられる。その人間とは、私達のパパだ。
パパはママが死んでから、毎夜自分を地下室に閉じ込めて狂ったように叫ぶのだ。
「怖いよー。」
「泣かないで、私達2人なら大丈夫。」
そう言って、ベットに潜り込んでいる内に私達は眠ってしまった。
夢を見た。私達家族がまだ幸せだった頃の夢を。研究者の父ジェームズと専業主婦の母マリア、そして私達双子の4人家族。毎日悩みごとを聞いてくれる優しい母と頭が良くてよく勉強を教えてくれていた父。
だが幸せだったのも束の間、母はいきなり体調を崩し、苦しんだ後に命を落とした。
それから父は夜中に暴れまわるようになり、私達に危害を加えないようにと、夜は自ら地下室に閉じこもるようになった。
部屋に差し込む太陽の光で目が覚めた。リビングに行くと3つの皿の上に目玉焼き、ベーコン、食パンがのっていた。
「おはよう。昨日はよく眠れたか?」
「うん。眠れたよ。」
パパは朝になると普通になる。
「今日は帰るのが遅くなりそうだから、家のことは頼んだぞ」そう言って家を出て行った。
私達はこれから食器を洗って、洗濯をして、掃除をしなければならない。
「私は食器を洗うね。」
「じゃあ私は洗濯する。」
2人で分担すると、楽に仕事が終わった。
「次は掃除だね。」
掃除をする時、破ってはいけないルールがある。『絶対に地下室には入らないこと。』
「地下室、気になるなー。覗くのもダメかな?」
「今日は家に帰るの遅くなるって言ってたし、覗くだけならいいかも。」
私達は地下室に向かった。
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