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少年はそこで力尽き、倒れた……
人気の無い山の奥深くに佇む一軒の山小屋。そこに仙人のような風貌をした老爺と少年が暮らしていた。
少年の名はバド。まだあどけなさの残る少年で、茶褐色の髪に透き通るようなグレーで切れ長の美しい瞳をしている。彼は赤ん坊の時からその老人――フォガードに育てられ、フォガードは彼を勇者に育てあげようとした。しかし彼が選んだのは魔物ハンタ―への道だった。
それは彼がその“肩書き”を背負わされるのが嫌だったから
『勇者=正義の味方』という肩書きを……
彼は左耳に、稲妻型のピアスを付けている。それはある女性から貰った物で、最近彼が髪を伸ばし始めた理由もその女性に言われたからだった。
『そのピアスには、長い髪のほうが合うと思うわ』
彼女はそう言った。そして
『長い髪のあなたを見てみたい』とも。
少女のように見られたくなかった彼には抵抗があったが……
『あなたには、そのほうがきっと似合うと思うの』
『私は、そのほうが好き』
――……好き
そう言って彼を掌で転がした……
そんな彼女は既婚者だ。無償の愛を夫に捧げ
しかし、裏切られ……
挙げ句の果てには夫の浮気相手に呪いをかけられ生死を彷徨い、それでも尚――
夫を愛し続け……
彼は彼女のそういう一途な所に魅かれた。
だが決して自分に振り向くことは無く、彼自身もそれを求めようとはしない。ただ想いは捨てられず
――このピアスと共に……
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