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降り頻る雨の中、傘も差さずに歩く一人の少年を、気にするものは居ない。
ふらりふらりと、今にも倒れてしまいそうなその姿は、あまりにも哀れだった。
「..好き、だ。」
ため息にも似たその声は、雨音に掻き消されて何処にも届かないまま、地面へと堕ちた。
友達という肩書きを、壊すことなど出来るはずがない。
もし僕が女の子なら、あの大きな手に触れることも、あの柔らかそうな唇に口づけることも、許されたのだろうか。
虚しさや愛しさばかりが脳を支配して、どうにかなりそうだ。
「..さようなら。」
交差点の真ん中に立ち尽くして溢した言葉は、 車のクラクションに掻き消され、行き交う悲鳴を聞きながら、僕はゆっくりと瞼を閉じた。
君と笑い合う夢を見ながら。
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