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姉妹
静香の家は複雑だ。
回りに気を遣うようになったのもそれが原因だろうと考える。
静香のママは幼少の頃に亡くなった。父親は静香を不憫に思い、世話好きの親戚から紹介された女性と再婚した。その女性には二人の娘がいた。静香にいきなり二人の姉が出来たのだ。大きいお姉ちゃんと小さいお姉ちゃん。二人の姉は静香をとても可愛いがってくれたし、新しいお母さんも優しくしてくれた。
静香の読んだ『シンデレラ』とは似てもにつかない。寂しかった心が温かくなっていた。
しかし、こんな事があった。
叔母が遊びに来た時のこと。お土産に数種類の可愛いケーキを買って来た。姉妹は大喜こび。その上なんとケーキを選ばせてくれると言う。
「私、イチゴショートにする」
大きいお姉ちゃんが言った。
「私もイチゴショートがいい」
小さいお姉ちゃんが言った。
二人は睨みあい一触即発、今にもケンカが始まりそうになった。その時、機転をきかせた母が、
「あなた達、せっかくのケーキだものお誕生日で決めましょうよ。どちらが近いかしら?」
小さいお姉ちゃんが嬉しそうに、
「私の誕生日は来月すぐよ!」
大きいお姉ちゃんは悔しそうな表情で、
「私の誕生日はもうだいぶ過ぎてる。悔しいけどイチゴショートはあんたに譲るわ。お母さん、私はこっちのフルーツロールにする」
二人は、お皿にケーキを取ると、美味しそうに食べ始めた。
「静香ちゃんはどれがいい?」
母は優しく聞いてくれた。でも静香の心の中は悲しみで一杯だった。大きなイチゴの乗ったショートケーキも魅力的だし、ふんだんに果物を使ったフルーツロールも食べてみたかったから。
『私もそれがいい』その言葉が言えない。
静香は遠慮していた。新しい家族の誰とも波風を立てたくない。悲しい気持ちを飲み込んで無理やり笑顔を作ると、
「私はどれも良くて選べないから、お母さんとおばちゃまが先に選んで?」
母と叔母が顔を見合わせている。
「じゃあ、じゃんけんで勝った人から選びましょうか?」
母はそう言って笑った。
静香はこの後、何を選んだのか覚えていない。ただ、新しい家族を大事にしなくてはいけないし、仲良くしてもらっている姉達とケンカしてはいけないと考えた事は覚えている。
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