ネガイゴト

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ーーー 仕事が少し落ち着き、久しぶりの休日。 窓を全開にして新しい空気を部屋に送り込む。 「いい天気だな」 誰もいない部屋では、つい独り言を言ってしまう。寂しさなんて今更な程、一人には慣れてしまった。それでもたまに、仕事以外で女の子と話がしたいと思うのは、男なんだから普通の思考だろう。コンビニ弁当と栄養ドリンクで満たされた体でも、僕はいたって健康なんだと思った。 「散歩にでも行くか」 財布とスマホだけ持ち外へ出る。昼間に外に出ることが珍しすぎて、太陽に慣れていない僕は、目がチカチカしてよく前が見えないまま、久しぶりの昼間の町を歩いた。 あてもなく歩いて、気付くといつも通る神社の前に来ていた。 人気のない神社は竹林に囲まれ、鳥居の前まで来ないと社を見ることができない。神社の周りには何もなく、日の光が遮られて鬱蒼としている。なんとなく、ぐるりと一周して鳥居の前まで来た。 竹林が途切れた場所に石段があり、そこに佇む朱塗りの鳥居が幾重か連なり、神々しいまでに印象的な風景に見惚れてしまっていた。 神社なんだし、せっかくだから願い事でも呟いてみるか。 「心も体も満たしてくれる彼女ができますように…」 神社にも入らずに、こんなくだらない願い事を呟いて、賽銭もなくて罰当たりで申し訳ないなんて思ったが、願い事の取り消しが効く訳もない。 急に竹林が断ち切られたことで、まるでそこだけが太陽の光を集めているように思える様な、なんだか願い事を叶えてくれそうな雰囲気がした。 なんとも言えない幻想的な風景に見入っていると、石段の中腹に一人の少女が立っていることに気付く。いつからいたのだろうか、上ばかり見ていたから気付かなかっただけだろうか。
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