ササヤカな葉

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ササヤカな葉

桜が満開の春やな。 俺の高校の時の話なんか 聞かん方がええに決まってるやろ。 恋心と下心の境界があやふやで 薄っぺらい愛を語りながら 経験ばかりを積み上げた。 昔は眼鏡のよく似合うガリ勉やったけど 今となっては誰も信じへん。 まあ、走るんも速かったし 成績はトップ争いしてたから いじめられたりはしてへん。 モテもしてへんかったけどな。 高校一年の時のクラス懇親会で カラオケに行ったのが転機。 歌が上手すぎると驚かれて 女子たちにキャーキャー騒がれた。 悪い気はせえへんなと思った。 その日の帰り。 バンドやってる奴に一度だけと頼まれて 週末にライブハウスで歌うハメになった。 俺は音と光の大洪水に 自分の歌声を泳がせる快感で とてつもなく興奮していた。 生まれて初めての快感やった。 「正式にメンバーになってくれへん?」 ベースの奴にそう言われて つい「ええけど」と答えた。 やるからにはちゃんとやる主義。 自称カリスマ美容師に髪を切ってもらい 簡単なヘアセットのやり方を習って 翌日からその通りにして学校に行った。 髪型一つで周りの見る目が変わるんやで? 意味わからん。 あっという間にモテる男に成り上がって 学園祭のライブで歌った後には 勝手にファンクラブまで作られた。 こうなるともう無双状態。 他校の子からも普通に声を掛けられる。 小さいライブハウスは常に満員。 おねーさんからの甘いお誘い。 繰り返される数多の誘惑に 抵抗する強靭な理性なんて 持ち合わせる訳もない。 健康な男子高校生はそんなもんやろ。
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