ササヤカな葉

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気付いた後は笑いが止まらへん。 「俺と付き合ったら思い出の王子様と会わせてあげるけど?」 ネタバラシしてもええと思ったのに。 「別にいりません」 ツンと拗ねた顔をするから 可愛いまんまの姿は俺の中に閉じ込めていたい。 「ほんなら思い出と一緒に大事にしとき」 さっと手首に腕時計を巻き付けた。 「ゆるゆるやな(笑)」 お守り効かんくてごめんやで、の一言を 聞こえないように風に乗せた。 だいぶ時間が掛かった。 俺が日本に残した忘れ物。 やっと見つけた。 何年分の思いと一緒に抱きしめて 「ずっとこうしたかった」 と囁いた。 マミヤちゃんは首を捻りながら 反対の手首に巻いてる腕時計を見た。 俺がクリスマスプレゼントにあげたやつ。 「これは高三の時にお母さんに頼んで買ってもらったって言ってましたよね?」 あの日弁償するって言ったからな。 「どうしてこの腕時計にしたんですか?」 あの時の女の子に返したかってん。 返されへんかったから 次に思い出の子を超える好きな人に出会ったら もらって欲しいと思ってん。 本人が気付くまで嘘ついててもええよな。 「それ合格の花開くってキャッチコピーやねん」 「それだけ?」 「だから受かったやろ」 「何それ嫌味ですか?」 「聞いてきたんはマミヤちゃんやろ(笑)」 俺が思い出の王子様を超える日が来たら ほんまのことを話してもええで? 『はにゃ丸くん』はそれまでの間 大切に預かっておくことにしよっか。 「嘘ついてたよね?!」と 怒って笑うのを抱きしめる日まで。
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