ササヤカな葉

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そろりと右足を上げた。 文字盤のガラスに ヒビの入った腕時計が 横たわっている。 「「あっっ!」」 声が被った。 慌ててしゃがみ込んで 腕時計を手の平に乗せた。 うわ、これブランドの時計やん。 蝶と花のデザインの文字盤のガラスに ヒビが入ってる上に秒針も止まってる。 やってもた。 固まったままの彼女を見上げる。 「ごめん。壊してもうた……」 ゆっくりと立ち上がる。 まだ固まったままの彼女の顔を覗き込む。 「ほんまにごめんな?」 無反応。 「また弁償はするけど、今時計ないと困るやんな」 驚いたままの真ん丸な黒い瞳。 まるで拾われた子猫みたいやな(笑)。 「聞いてる(笑)?」 赤くなってる顔が可愛い。 「えっ、あっ、聞いてます」 ようやく反応した。 「とりあえず俺の時計使って」 「へっ?」 自分の腕時計を外して 彼女の手首に巻き付けた。 ほっそい手首。 「ゆるゆるやな(笑)。ごめんやで」 「えっ? あ、大丈夫なので……」 他には何か落ちてないか もう一度かがんで確かめた。 転がってるお守りを拾い上げた。 「これも自分のやろ?」 「え?」 「違うん?」 「あ、そうです。私のです」 あー、やってもた。 「お守りまで……。俺ら縁起悪いな(笑)」 彼女がはっとした顔をした。 「今それ言わないでもらえますか(笑)」 困ったように笑う顔にハートが射抜かれた。 胸が高鳴る。 天使みたいやと思った。 捕まえてしまいたい。 もう一度、強く風が吹いた。
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