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「葉っぱついてるで」
彼女の頭に乗った葉っぱを
そっとつまみ取った。
髪に触れる手が震える。
ぎゅっと抱きしめてしまいたい。
誰にでも簡単にできる事やのに。
真っ赤になった彼女の目の前に
黒いお守りを差し出した。
そして、気が付いた。
見つけた。
この子や。
「これ京都の神社のやつやろ?」
北斗七星の刺繍がされている。
約一年前に俺は買うのを見ていた。
「よくわかりましたね」
ポニーテールをおろしている彼女にドキドキする。
平静を装う。
「珍しいからな。俺その隣の神社で合格祈願してん」
「やっぱり関西の人なんだ(笑)」
弾ける笑顔を思い出す。
北斗七星の神社は方角の神様やと
オカンが言ってた。
合格祈願なら学問の神様にお願いすべきやろ。
「何で受験と関係ないお守りにしたん?」
「冗談みたいなものです」
「冗談?」
「私の名前が北斗七星のアニメに出てくるキャラと同じ名前なんです」
「そうなんや。何て名前……」
質問の途中。
「君たち早く会場に入りなさい」
職員さんに声を掛けられた。
気付けば正門が閉められている。
やばっ!
慌てて二人で走り出した。
「俺の時計は安物やし捨ててくれてもええけど」
「はい?」
走りながら叫ぶ。
「壊したやつは弁償したいねん」
「元々壊れてたからいりません」
「動かん時計持って来るあほおらんやろ(笑)」
しかも、あんな高そうな時計。
「やから、試験終わったら電話して」
参考書の最後のページに
電話番号を走り書きして破いた。
彼女にそのメモと自分のお守りを握らせた。
梅の花が刺繍された合格守り。
この大学に受かるように願掛けしてある。
オカンが勝手にやっただけやけど。
建物の入口にたどり着く。
「わ、私の試験会場ここです」
「俺もっと奧の建物やねん。走るわ」
ゼエゼエと息の上がる彼女を残して
さらに走った。
名前を聞き損ねたと思ったけど
試験が終わってからのがええよな、と
トキメキを胸に忍ばせた。
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