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試験はまあ受かるやろ。
模試もずっとA判定やったしな。
合格しても
俺はアメリカの大学に行くから
同じ学校には通われへんけど。
また会いたい。それだけやねん。
昼休みに探しに行こうと思ったけど
弁当を食べた刺激でまたトイレに籠り
試験終わった直後も安心したせいか
トイレとお友達になってた。
何に当たったんやろ?
お腹をさすりながら
建物の前で鳴らない携帯を見つめる。
いきなり電話番号を渡すとか
怪しい奴やと思われたんやろか。
名前くらい聞いとけば良かったな。
「早く帰りなさい」と職員に言われて
仕方なく歩き始めた。
風が吹く。
チリンと音が聞こえた気がして
足元を見た。
「何やこれ?」
『はにゃ丸くん』という小さなキーホルダーが
道の真ん中に落ちている。
彼女の物やと直感した。
拾って駅まで走ったけど
姿を見つけることは出来んかった。
合格発表の日なら絶対におるはずやと
朝一番から貼り出しが終わるまで
ずっと探し続けたけど
どこにも見当たらなかった。
違う大学を選んだんやろか?
あの時、俺はどうすれば良かったんやろ。
「アメリカに行くまで通えばええやないの!」
合格した俺はオカンに言われたけど
そこに入学してもうたら
日本に引き留められそうな気がして
頑なに断った。
その後
名前が某アニメのキャラやっていう
唯一の手掛かりを頼りにして
従兄弟の成仁が働いている大学に
「マミヤ、リン、ユリア」って名前の子が
一年におらんか聞いたことがある。
個人情報なんか教えられへんって言われたけど
マミヤはゼロ、
リンって名前は数人いて
ユリアって子は一人いるところまで
誘導尋問で聞き出した。
俺よりずっとイケメンの成仁が
大学卒業後も学内でモテまくってるから
知り合いやったら嫌やなと思った。
それでも
アメリカに行くまでの間に
何回か大学に探しに行ったけど
手掛かりすら見つけられんかった。
タイムリミット。
俺の一目惚れは日本に置いて飛び立った。
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